保坂知晃
岐阜県御嵩町にある国選定の重要湿地に、リニア中央新幹線のトンネル工事に伴う残土を処分する計画を巡り、生態学の研究者らでつくる一般社団法人「日本生態学会」の自然保護専門委員会は27日、事業区域の変更を求める要望書を同町に提出した。地域に残存する貴重な湿地群や希少種に対し、事業が多大な影響を与えるとしている。
要望書はJR東海にも郵送したほか、古田肇知事と国土交通、環境両大臣には要望書の提出を報告する文書を送った。
要望書は、JRが計画する移植によるハナノキ(絶滅危惧Ⅱ類)の保全について、絶滅危惧種の移植には一般に枯死のリスクが伴うとし、「自生地で『生息域内保全』を優先して検討すべきだ」と指摘した。
ハナノキ以外も含め、湿地群で確認されているすべての希少な動植物に十分な保全措置を施すことは、「コストや科学的情報の欠如などから困難と考えられる」として、処分候補地から除外すべきだとした。
また、昨年12月の国連の生物多様性条約の締約国会議(COP15)で、2030年までに地球の30%以上を保全エリアとする「30by30」などを盛り込んだ新目標が採択されたことを挙げ、「国際的な視点からも、(現在の処分候補地は)開発から除外され、優先的な保全が検討されるべきだ」と主張した。(保坂知晃)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル